世界一快適な空港の更なるサービス向上への挑戦
~ 日本空港ビルデング ナガレミル導入インタビュー ~

お客様情報
日本空港ビルデング株式会社
日本空港ビルデング株式会社は、羽田空港第1ターミナルをはじめとする旅客ターミナルの建設、管理・運営を担う企業です。1953年に設立され、旅客サービスの提供、商業施設の運営、オフィスやラウンジの管理など、空港を中心とした多彩な事業を展開しています。空港利用者に快適で便利な空間を提供するだけでなく、日本の空の玄関口としてふさわしいホスピタリティと機能性を追求し続けています。国内外から多くの人々が訪れる羽田空港を支える中核企業として、空港の発展と地域・社会への貢献を目指しています。
導入サービス
「ナガレミル」は、3D-LiDARとAIを活用して、広い範囲で歩行者や車両の数、方向、速度などをデータ化するサービスです。最大の特徴は、3D-LiDARセンサーによる人の検知機能です。これにより、夜間や雨天でも高精度で人を検知できます。また、カメラとは異なり個人情報を取得しないため、自治体、イベント施設、公共交通機関など、さまざまな場面での活用が期待されています。
インタビュー概要
2025年の「世界で最も清潔な空港ランキング」で10年連続世界第1位に輝き、国内線エリアの使いやすさや快適性でも高い評価を受けている東京国際空港(羽田空港)は総合ランキングでも世界トップ3にランクインし、名実ともに“世界水準”の空港として注目を集めています。
この羽田空港旅客ターミナルの建設、管理・運営を担っているのが、日本空港ビルデング株式会社です。同社では、さらなる快適性の向上と空港運営の最適化を目指して、さまざまな先進的な取り組みを進めています。
その一つが、ナガレミルによる人流観測です。今回の導入にあたっては、当社の3D-LiDARによる先進的技術が高く評価され、公共性や安全性が厳しく求められる空港内での実装が実現しました。
2024年7月には、第1ターミナル2階の出発ロビー南ウイングに3D-LiDARを設置。まもなく北ウイングにも展開予定で、出発ロビー全体での人流観測が本格的に始まろうとしています。
今回は、ナガレミル導入の背景や現場での反応、そして今後の展望について、羽田空港旅客ターミナルの建設、管理・運営を担う日本空港ビルデング株式会社で本取り組みを担当されている川﨑様にお話を伺いました。


導入の経緯
「空港をもっと快適に」人流観測で変わる羽田空港の未来
川﨑様のお仕事内容と、日本空港ビルデング様が日々どのような空港運営を目指し仕事をしているか教えていただけますか?
弊社、日本空港ビルデングは、東京国際空港、いわゆる羽田空港において、さまざまな事業を展開しております。主な業務としては、国内線旅客ターミナルビルの建設、管理・運営を担っており、空港を利用されるお客さまに快適な空間をご提供できるよう取り組んでいます。会社の成り立ちについてですが、戦後、GHQから羽田空港が返還された際に、国として民間資本を活用して空港を整備・運営していこうという動きがあり、その中で設立されたのが弊社です。1953年7月設立で現在では設立からおよそ71年を迎えております。空港という特性上、航空会社さまや空港構内で営業されている事業者さま向けに、事務所や店舗スペースの賃貸も行っております。また、羽田空港にある5つの駐車場のうち、2つについては弊社が管理・運営を担当しております。
弊社は「不動産業」として登記されておりますが、事業領域はそれにとどまらず、物品販売や飲食業、さらに空港内の案内業務など、空港運営に関わる幅広い分野を手がけております。弊社にはさまざまな方針がありますが、大きく分けるといくつかの柱があります。まず一つ目は、旅客ターミナルビルの運営において「絶対安全の確保」を最優先に掲げているという点です。多くのお客さまが行き交う場所ですので、安全は何よりも大切にしています。
次に、「お客さま本位」の考え方を軸に、利便性や快適性、さらには機能性の高い旅客ターミナルの実現を目指しています。常に利用者の立場に立って、どうすればより良い空港体験をご提供できるかを意識して運営にあたっています。 また、ターミナル運営の安定性と効率性の両立も重要なテーマです。それに加えて、企業としての体質強化にも取り組んでおります。弊社は複数のグループ会社を有しており、各社が異なる分野で事業を展開しています。グループ全体の総力を結集しながら、「お客さま本位の空港運営」を目指して日々取り組んでおります。

昨年、第1ターミナルの出発ロビーにナガレミルを導入いただきましたが、その背景やきっかけ、
これまでの空港運営における課題と、それに対する取り組みについてお聞かせいただけますか?

羽田空港は非常に規模の大きなターミナルで、年間の旅客数はおよそ8,500万人と、日本で最も多くの利用者が訪れる空港です。そのため、混雑が常に大きな課題となっています。 弊社では長年、「どうすれば混雑を緩和できるか」という点に取り組んできました。その中で、センサーやカメラといったIoT機器を活用し、混雑状況を可視化してデータとして捉え、分析・改善していくというアプローチを取るようになりました。
そういった調査・検討を進めていく中で、LiDARという技術に出会ったというのが背景です。羽田空港のように多くのお客さまが行き交う場所では、混雑状況の把握が非常に重要になります。 さらに、空港ではユニバーサルデザインの視点も重要で、さまざまなお客さまにとって使いやすい空間をつくるためには、人の流れや滞留の傾向を正確に把握する必要があります。 たとえば、トイレの配置ひとつとっても、場所によって混雑度がまったく異なるケースがあります。そういった情報がデータとして見えるようになると、将来のレイアウト変更の参考にもなりますし、移設の判断材料にもなります。
また、お土産店のような店舗も同様で、時間帯や場所によって混雑の度合いが大きく異なります。従来は経験や勘に頼る部分も多かったのですが、こうした人流データを可視化することで、例えば人員配置を最適化したり、売れ筋の商品を混雑する時間帯に合わせて展開したり、あるいは混雑を分散させるといった運営上の工夫が可能になります。
このように、人流の可視化は空港運営におけるさまざまな改善の鍵になると考えています。
導入にあたってさまざまな選択肢をご検討いただいたと伺っておりますが、最終的に弊社のナガレミルをご採用いただいた理由をお聞かせいただけますか?
実際に御社からご提案いただいたのが2022年で、そこから採択までに少しお時間をいただいたのですが、最終的に「ナガレミル」を選ばせていただいた一番の理由は柔軟な対応力でした。もちろん、技術力やコストといったさまざまな要素を比較検討しましたが、やはり空港のようにロケーションが多岐にわたる大規模施設では、「機器の選定が柔軟にできること」が非常に重要でした。その点、岡谷エレクトロニクスさんは商社機能もお持ちで、特定のメーカーに限定されず、最適な機器を幅広くご提案いただけるというのが非常に大きな強みだと感じました。実際、他社さんからも提案を受けたのですが、メーカーさんですとやはり「自社製品ありき」になってしまうことが多く、どうしても柔軟性に欠けるケースがありました。もちろん、オーダーメイドも可能ではあるのですが、その分コストが非常に高くなってしまうという課題がありました。
一方で御社は、「何でも調達できます」「お客さまの環境に合わせて最適な組み合わせを考えます」といったスタンスで、非常に親身に対応していただきました。空港という特殊な環境に対して、汎用性のある機器を組み合わせてご提案いただける点は、非常に心強かったです。
また、当時(2022年)は人流解析やLiDARの分野自体がまだ新しい技術領域で、ソフトウェアにおいて圧倒的なプレイヤーというのが正直存在していない状況でした。そうなると、最終的にどこを軸に選ぶのかという話になるのですが、私たちとしては「技術力」や「価格」だけではなく、やはり導入後も含めた柔軟性や対応力、そして提案力といったところを重視しました。
そうした複数の視点から総合的に判断した結果、「ナガレミル」と岡谷エレクトロニクスさんを選ばせていただいた、というのが率直な背景です。

ナガレミルとOECに対する感想
“柔軟性”と“対応力”が決め手に――羽田空港が語るナガレミルの導入体験
3D-LiDAR技術について初めて聞いた際の感想を教えてください

私自身もそうでしたし、社内でも同じような意見が多かったのですが、「混雑する検査場のような場所でも人流データを活用できるのであれば、非常に可能性が広がる」という声が多くありました。実際に、出入国管理のあたりは非常に混雑しますし、そういった繰り返し混むエリアで活用できるなら、より効果的だろうと感じました。
特にそういった場面で重要になるのが、プライバシーへの配慮です。画像を使ったソリューションと比較しても、やはりLiDARのように個人が特定されない仕組みの方が受け入れられやすい、というのが私たちの実感です。最近では、カメラでも一時的に画像を取得して、それを即座に数値化・匿名化し、データとして保存しない、ネットワークにも流さない、という技術も出てきてはいます。確かにそのような方法ならカメラでも対応可能なのでは、という議論も社内ではありました。ただ、それでも「一度でもカメラ画像がサーバーに入ってしまう」ということに対して、根強い懸念があるのも事実です。いくらローカル処理であっても、「そもそも画像を取得しない方がいいのではないか」という考えは、依然として根強く残っています。ですので、最終的には「完全にプライバシーリスクをゼロにできる」手段として、LiDARのような技術に安心感があるという判断になりました。
担当スタッフの印象について良かった点や逆に不満があった点をお聞かせください
導入にあたって実証実験を行ったのですが、空港利用者が少ない深夜帯での実施となり、長時間の作業になってしまいました。そんな中でも、最後まで丁寧に対応していただき、本当に感謝しています。また、不具合やトラブルが発生した際にも、すぐにご報告いただけるなど、非常に迅速かつ誠実な対応をしていただいていると感じています。こうした対応力には、とても大きな信頼感を持っています。
一方で、不満というほどではありませんが、センサーの設置に関しては、やや不慣れな印象を受ける場面もありました。
今回の人流観測サービスについて、100点満点で評価いただくと何点になりますか?その理由もあわせてお聞かせください。
改めて率直に申し上げると、これまでの対応にはとても満足しています。先ほどもお伝えしたとおり、柔軟で丁寧なご対応をしていただいて、本当にありがたいなと思っています。
満足度で言えば、気持ち的には100点でも良いくらいなんですが、あえて申し上げるならば、工事面などでまだ改善の余地がある部分も感じているので、総合的には80点ぐらいかなという印象です。というのも、100点と言ってしまうと“もうこれ以上は期待していない”という意味にも取られかねないので、あえて少し余白を持たせています。御社にはまだまだ伸びしろがあると思っていますし、これからも引き続き、より良い形でご一緒できることを期待しています。

今後のデータ活用について
人流データで空港運営を進化させる「UX向上とオペレーション最適化への挑戦」

取得した人流データを今後、どう活用していく予定ですか
やはり空港は常に多くの人が行き交う場所ですので、「混雑」というのは非常に重要なテーマになっています。今回の取り組みの軸も、まさにその混雑をどう改善していくかという点にあります。もちろん、物販エリアや保安検査場など、わかりやすい課題も多くありますが、実はもっとミクロな視点でも改善したいことがたくさんあるんです。例えば羽田空港は「世界一清潔な空港」として10年連続12回目の世界第1位をいただいているのですが、それを支えているのは現場の清掃スタッフの方々です。現在は彼らが経験で判断して動いていますが、混雑状況が可視化できれば、清掃タイミングや人員配置もより効率的にできると考えています。極端な例ですが、トイレットペーパーの発注量さえも、トイレの個室の利用データと混雑状況を組み合わせることで、最適化が可能になります。そうした小さな改善を積み重ねることで、全体としてのUX(ユーザー体験)の向上につながると感じています。
今回、人流観測の実証を行っていただく中で、まだ分析は途上ではあるものの、「きちんとデータが取れる」という点は確認できました。最近ようやく、第1ターミナルの出発ロビー全体にセンサーを設置することができました。そして得られたデータを使って今後の分析に活かせるという実感は得られています。具体的にどのタイミングで成果を出すかという点では、来年3月までには何らかの分析結果をまとめて社内に提示する計画です。これは弊社の中期経営計画の最終年度にあたるため、会社としても明確な目標になっています。この分析が進めば、混雑状況に応じた人員配置や施設の運用など、オペレーションの最適化につなげていけると思っています。特に施設管理や店舗運営は当社の中でも非常に重要な柱ですので、そこに直結するデータ活用には大きな期待を寄せています。

空港業界全体として、人流観測の導入はどの程度進んでいると感じますか?
私の知っている範囲にはなりますが、国内地方空港の一つでは、弊社よりも早く導入が進んでいまして、保安検査を通過した後のエリア、いわゆる制限エリアのほぼ全域にカメラやセンサーが設置されていると伺っています。国際線については、まだすべてが実装されたかどうかは分からないのですが、国際線と国内線を商業的な目的で相互に行き来できるような構造を検討されていると聞いています。その場合、税関や申告といった手続きを踏まえる必要があるため、出入りする人の管理が非常に重要になります。そういった背景から、カメラやセンシング技術を活用した出入り管理の仕組みも検討されているようです。人流観測の導入状況については、空港ごとに進捗にかなり差があるので、全体としてどのくらい進んでいるかは正直なところ分かりません。ただ、ほぼすべての空港で「人流の把握」は共通の課題として認識されていて、関係者の間でも話題に上がることが多いです。
空港以外で、当社のナガレミルが活用できると思われる業界や場面があれば教えてください。
たとえば、駅などの交通拠点では特に混雑が課題になっていて、「首都圏の特定の駅では流れが滞っている」といった話を聞くこともあります。そういった場所では、人流の可視化が非常に役に立つのではないかと感じています。
最後に
改めまして、空港運営において混雑対応というのは非常に重要な課題です。その点で、これまでのご協力には本当に感謝しております。
現在、訪日外国人のお客さまが過去最高を更新しつづけており、空港のキャパシティが追いつかないほどの混雑状況になっています。そうした中で、人流の可視化という取り組みは、これまで以上に重要性を増してきていると実感しています。
今後も御社のソリューションには大いに期待しておりますし、引き続きご支援・ご協力をお願いできればと思っております。
「ナガレミル」サービス詳細資料はこちら

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